バーチャルウォーター

コラム2020.02.17

 世界の国々の目が光る水ビジネス。安全な水を飲むことができない人が世界の五分の一に達するといわれています。蛇口から出る水を直接飲める国は、世界に11カ国しかないそうです。水に恵まれた日本に住む私たちは分かりづらいかもしれませんが、水資源をめぐる国家の対立は過去何度も起こり、毎年300万人から400万人もの人が水に関連した病気で命を失っているのが現状です。  

 ただ、飲み水は水資源のごく一部でしかないのをご存じでしょうか。人間が1日に飲む水は、2Lもあれば十分で、年間一人1000Lもあれば足ります。ミネラルウォーターは石油より高いといわれますが、水道水なら1L=0.1~0.2円。世界的に見ても、1トン1ドルが相場で、とても安いのです。その水道水を日本人は一人1日330L、年間12万L使うといわれています。つまり生活用水として使っている水が、飲み水の100倍以上ある計算になり、先進国では一人あたり年間100万Lもの水を使っているといわれています。

 というのは、水というとつい飲み水ばかり考えがちですが、実は食料を作るのに大量の水が使われています。例えば、牛を育てるのには大量の芝や飼料が必要で、それには大量の水が消費されます。飼料となるトウモロコシ1kgを生産するためには、灌漑用水として1800Lの水が必要となるため、牛肉1kgを生産するためには、その約2万倍水が必要となります。こういう水を換算したものを「バーチャルウォーター」(仮想水、間接水)と呼びます。食料を輸入している国(消費国)において、もしその輸入食料を生産するとしたら、どの程度の水が必要かを推定したものです。妻路、日本は海外から食料を輸入することによって、その生産に必要な分だけの自国の水を使わないで済んでいるのです。  

 こうして1年間に日本が輸入しているバーチャルウォーターを計算すると合計1000億トンにも上ります。現在、日本国内での水資源使用料は900億トンなので、国内とほぼ同じくらいの量を海外に頼っており、結果的に、日本人は外国の水に依存して生きていることになります。世界レベルの水浄化技術を持つ日本は、海外で水ビジネスを展開できるチャンスがあるといわれていますが、これを成功させることは自国の水問題を安定させることにもつながるのではないでしょうか。