第六の味覚

コラム2020.01.16

  人間の味覚には「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」「うま味」の五つが知られえていますが、第六の味覚「脂味」という新しい味覚があることが最近の研究で分かってきました。この研究が進めば生活習慣病の予防にも役立つとの期待が高まっています。

 この「脂味」は、オーストラリアのディーキン大学や連邦化学産業研究機構などが共同研究を行って発見されたものです。具体的には、被験者30人を対象に複数の脂肪酸の味を感じることが出来るかの実験を行い、この結果、被験者全員が「脂味」を感じることが出来ました。次に、被験者50人を対象に「脂味」の濃度に対する感度の違いを調べる実験を行い、人には「脂味」を感じる閾値があることを発見しました。この閾値とは、刺激がある値以上に強くないと反応しない限界値を意味し、ここでは脂肪酸の濃度を指します。この閾値が低い(敏感)人は、微量でも脂肪酸の味が感じられるのに対し、高い(鈍感)人は、同量でも脂肪酸の濃度を感じられないというわけです。つまり、これによって人間が「脂味」という味覚を有する可能性が見出せたのです。

 また、この実験結果から脂肪酸に敏感な人は、微量でも脂肪の存在を認識するため、脂質の摂取量が少なくなり、体重過多になりにくいという研究結果を導き出せます。実際に、被験者で油の味に敏感な人はBMI(身長と体重から算出する肥満度指数)が低くなっています。このBMIが高ければ、糖尿病や心臓病の発病率が正常値の人に比べて高くなることが知られています。日本のBMIの標準値は男女ともに22とされていて、この値は長生きできる可能性が高い数値といわれています」。よって、この「脂味」に敏感になることは、糖尿病や心臓病といった病気を未然に防ぐことにつながる可能性があるのです。

 昨今、ファーストフードやコンビニなどの店舗数拡大によって、私達は脂肪を多く含む食品を摂取する機会が多くなっています。そのため、知らず知らずのうちに「脂味」に鈍感になっている可能性があります。「脂味」を敏感に感じるのに良いとされるのは、亜鉛を多く含むレバーや牡蠣、ココアといった食材といわれています。こういった食材を日々の食事に取り入れることも、BMI値を抑えながら長生きする秘訣になるかもしれません。