自然が奏でるメロディー

コラム2019.06.10

  風が木の葉を揺らす音、小川のせせらぎ、虫の鳴き声・・・。日本には古くから、夏や秋になると、自然の音を楽しむ文化があります。例えば、夏にセミの声をうるさく感じることもありますが、セミの鳴き声が聞こえないと夏を実感できない・・・。言われてみると、なるほどと思われる方も少なくないのではないでしょうか。今回はいよいよ本格的な夏を迎えるにあたり、少しでも楽しみを感じていただくため、音について少しお話ししたいと思います。

 

 音楽療法やヒーリング・ミュージックというのがあることからもわかりますように、音には心理的に安心感を与えたり、気持ちをリラックスさせたりする効果があります。皆様にも、クラシックなどの音楽から水の音、虫の声などの自然の音を聞いて癒された経験があるのではないでしょうか。しかし、自然の音を聞いて癒させるのは日本人ぐらいのものだということはご存知でしょうか?

 

 日本語には他の言語と違った、次のような独特の性質があります。それは、「擬音語が多い・母音一字にも言葉を当てはめられる・単語は全て子音と母音で出来ている」ということです。それにより、日本人は虫の声や自然の音までも「声」として捉えるため、声の理解や論理的・知的な処理をするところである左脳でこれらの音を感じるのです。一方、英語などの欧米語は、子音と母音が明確に分離した言語であり、子音は左脳、母音は右脳で処理され、それぞれの音に対して管轄が異なります。虫や自然の音を西洋人は音楽や雑音、機械音などを処理する右脳で感じるため、これらは「雑音」として捉えられがちなのです。そのため、自然の音を聞いて癒されるという感覚は少ないのだそうです。また、虫の声を聞いて、あれはマツムシだとかコオロギだとか聞き分ける感覚も他の国の人は日本人に比べて発達していないのだそうです。

 

 自然の奏でる様々な音を聴くことができる感覚を授かった我々に日本人はとても恵まれていると言えます。

 

 今年の夏、そんな特権を活用し、「ちょっと一息」の時間に、自然の音・虫の声による演奏を聴いて暑さを楽しむ余裕を持つよう意識してみてはいかがでしょうか。