ヘアサイクルと毛根幹細胞

コラム2018.03.14

 毛根の皮脂腺の下にあるバルジという丸く膨らんだ部分に、すべての皮膚組織の細胞を作り出す毛根幹細胞が存在することが今世紀になって立証されましたが、今回は毛髪のヘアサイクルに毛根幹細胞がどのように関わっているかについてお話します。

 毛髪は絶えず一定のスピードで成長し続けているのではなく、2~6年間毎月一センチ程度伸び続け(成長期)、その後成長がストップし(退行期)髪が抜け、約3ヶ月髪を造らない期間(休止期)を経て再び成長期へ移行します。この繰り返しをヘアサイクルといいますが、実は退行期に、バルジに潜んでいた毛根幹細胞が増殖し、毛根の一番底に移動を開始します。そして、休止期には底に移った幹細胞は毛芽(もうが)という細胞に変化(分化)し発毛の準備に備えます。そして成長期になると、毛芽は毛母細胞に変化し、分裂を繰り返して新しい毛髪を造りはじめます。このように毛根幹細胞は、ヘアサイクルの重要な役目を果たしています。

 それでは退行期になぜ幹細胞が活動を開始するのかというと、この時期にはある種のサイトカイン(細胞から体液中に分泌される生理活性物質)が、幹細胞に活動を開始するようにシグナルを送るからといわれています。